SOMEWHERE


公開を心待ちにしていた作品。 一番の感想は”ソフィアの4つの作品の中でも一番好き”という事。 詩的で映像の色も雰囲気も音楽もいつも以上に最高だったけど、初めて共感できた。 11歳のクレオに。





毎度の事、孤独で空虚で退屈な主人公と、決してドラマティックな展開は起こらない、淡々としたストーリー。セリフのない長回しばかり。でもこの静かな感じが、映画館では心地よい。


父親目線で共感はできない。ハリウッドスターでフェラーリに乗って毎晩酒と女に溺れてる人。だけど娘目線だと父と娘の関係ってあんな感じだと思う。色んなとこ連れってってもらって、お父さんの友達とゲームして、習い事の送り迎え、夜中にアイスクリーム全種類をベットの上で食べる(母はそんな事させてくれない。)、嫉妬したり恋人みたいにべったりくっつく。それが父と11歳の娘の関係で、スターじゃなくても離れて暮らしていなくても同じだと思った。すべてがあたしにも記憶する風景、だからすごく懐かしい。



クレオ役のエル・ファニングがみずみずしっくって儚い。鼻がくいっと上がっているのがかわいい。この画像はプールの中でtea timeごっこをしているトコロ。向かいにはジョニー。ファッションもワンピースを1枚さらりと着こなしてエルメスのレザーブレスをつけてるような、11歳にしてはお洒落で垢ぬけている女の子のイメージ。彼女がどんな女の子なのかを、水色の衣装を着て優雅に舞うアイススケートのシーンが、すべてを表現していたように思う。朝ごはんに手際よくエッグベネティクトを作ってあげ、パソコンにキャンプに持ってく物リストを打ち込む。離婚した両親の間でしっかりした部分と、11歳のあどけなさが彼女は混在しているようにも見えた。


好きなシーンがあって、イタリアからホテルに帰ってきたふたりが疲れてソファーにもたれ、「おかえりジョニー。1曲歌おうか。」とおじいちゃんウェイターが”Teddy Bear”をギターで歌ってくれるところ。すごくうまいわけではないけどとても温かくて、クレオがジョニーの肩にもたれ目がとろ〜んとしているのが、観てるだけで幸せだった。びっくりしたのが、このエピソードはソフィアの実体験で、おじいちゃんウェイターは実際に30年以上シャトー・マーモントで働いている”歌うウェイター”として実在していたこと。すごく素敵だなと思う。



何週間か一緒に過ごしたあと、クレオをキャンプに送り届ける車の中で、クレオはいままでの寂しさや我慢が涙になっていっきに溢れだす。でもちゃんと手をふって笑顔で出発する。ひとりになって寂しくなるのはジョニーのほう…。家族の前ではやっと本来の自分に戻れると気づくから?


最後はジョニーがホテルをチェックアウトして、フェラーリを乗り捨て、自分の足で歩きだすエンディング。きっとね”これからはちゃんと家を買ってクレオの部屋を用意してあげる。キャンプにも一番乗りで迎えに行くような父親になってる。”エンドロール中にその先が想像できた。


たぶんソフィア自身の父娘関係がこの映画にたくさん影響を与えてるんだろうな。